備前焼の窯は登り窯を使う場合が多く、3~4室に分けられた窯に順番に火を入れていきます。
◇各部の名称と役割り
登り窯は、火が窯全体に回りやすいように傾斜がついています。
画像は左右に動かせます
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1.【焚き口】
窯焚きの際は、ここから薪をくべます。
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2.【ロストル】
釜の中に空気を送るための空気口です。
一番大きなロストルは焚き口のしたあたりにありますが、両サイドにも小さなロストルがあります。
空気はこのロストルから窯の下に回り、窯へと流れていきます。 -
3.【ウド~一番~ケド】
窯の一番手前の部屋を「ウド(運道)」といいます。 一番後ろの部屋を「ケド(煙道)」といい、ウドの次の部屋からケドまでの部屋を、一番窯、二番窯、三番窯…と続けて呼びます。 窯の大きさによって、窯の数は違います。
ウドは、割り木を多く遣うため、作品は渋めの色になることが多く、後ろの部屋になればなるほど少し浅めの色になります。 ケドは、「火がはしる」「火が抜ける」といい、十分な酸素がある状態で焼かれる酸化焼成になりやすく火襷の焼き色をつけるのに適しています。 -
4.【煙突】
焚き口から薪を燃やしたときにでる煙は、ケドの後ろにある煙突をつたって外へ流れます。
◇窯の伸縮
窯は耐火煉瓦で作られています。その周りに熱が逃げないように土壁が塗られています。
窯に火が入ると、この窯が膨張し、周りの土壁にヒビが入ることがあります。
その膨張による窯のダメージを最小限に抑えるために、最近では窯の周りを鉄で補強するなどの工夫が施されています。
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<火を入れる前の窯>
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<火を入れているときの窯>
◇松割り木
備前焼の窯焚きには、赤松を使います。
赤松は、松脂を多く含んでおり火付きがよく、火力も強い材質です。
また、備前焼の代表的な焼色であるゴマの黄色は、この赤松でなければきれいに発色しないといわれています。
一回の窯炊きに、この赤松の割り木を1200~1800束使用します。
◇焼き
最初の2~3日はLPガスや灯油などを使って、窯の中の湿気をとります。
ロストルから入る空気の量を調節したり、薪の量を加減したりしながら温度を適温まで上昇させ、
その後は、焼き終わるまで日中夜問わず、20分に一度薪をくべ続け、その温度を保つよう管理します。
焼成は、窯によっても違いますが、だいたい1100~1300度に達し、一定の温度を保ちます。
温度は、温度計を窯に差し込み計測します。
窯の中では作品が真っ赤に、あるいは赤白く輝いています。
ウドの焼成時間が一番長く、ウドが焼けたら、一番、二番…と順番に焼いていきます。
ウドを焼くときは、正面の焚き口から割り木を入れますが、それ以降は、横の小さい穴から入れていきます。
こちらの窯の場合は、ウドの焼成時間は、7~10日ほどで、その後一番に移り24~36時間、ケドの焼成時間は6時間ほどになります。
合計で約2週間焚き続けます。
炊き続けている間や、焼き終わった後に、この長いスコップで、作品に炭をかけます。
この炭が、桟切や胡麻の模様になります。
こちらの窯焚きの時間や温度、割り木の量などは、取材させていただいた「柴岡陶泉堂 香山窯」の窯の情報を元に掲載しています。
これらの情報は窯の大きさ、作風などによっても変化するものですので、一窯元の数値としてご理解ください。
1週間から2週間ほど焼いた窯の中は非常に熱くなっています。
火を止めてからすぐに窯を開けると、急激な温度変化によって作品が割れてしまいますので、1週間ほどかけて自然に冷まします。
窯がさめてきたら、焚き口の煉瓦を取り除き、作品を出していきます。
窯の中には、灰が被さった作品や、藁が綺麗に焼きついた作品がたくさんあります。
それらの作品をひとつずつ、状態を見ながら取り出していきます。
焼きあがったばかりの作品は、灰や藁、土がついています。
白い丸型の綿のようなものは、焼き色をつけるためガラス繊維を丸め、窯入れの時に作品につけたものです。
このガラス繊維は、丸みのある作品を寝かして焼成する際に支えるために使うこともあります。
窯から出したばかりの作品は、焼成時のガラス繊維や灰、藁などが付着していていますので
テーブルや重ねた器同士が傷つかないように、丁寧にやすりをかけていきます。
灰がたくさんかかったお猪口も、綺麗に磨きます。
お猪口は口当たりが変わってくるのでより一層滑らかになるように磨きあげて、完成です。