備前焼の特徴

備前焼の特徴

備前焼は、岡山県備前市伊部(いんべ)地区周辺を産地とする焼き物です。
釉薬を一切使用せず、1200〜1300度の高温で焼成する焼締め陶です。

土の性質や、窯への詰め方や窯の温度の変化、焼成時の灰や炭などによって生み出される備前焼は、一つとして同じ色、同じ模様にはなりません。

茶褐色の地肌は、備前焼に使われる粘土の鉄分によるものです。

備前焼は、高温で約2週間焼き締めるため「投げても割れない」と言われるほど堅く、すり鉢や、大きなカメ、壷が多く作られていました。
また、現在では、微細な気孔があり通気性に優れているため、切花が長持ちする花びんや、微細な凹凸により、きめ細かな泡ができることからビールグラスとしても重宝されています。

備前焼の粘土

備前焼で使用されている土は、「干寄(ヒヨセ)」と呼ばれる、田畑から採掘される粘土です。
田畑の地下2~4mのところに30~90cmほどの薄い層で、岡山県備前市伊部(いんべ)の備前中学校付近に良質なものが多いようです。

ヒヨセは、伊部の北に位置する熊山連峰から100万年以上も前に流出した土が蓄積したもので、きめが細かく粘り気があり、また、陶土としては鉄分が多く含まれています。

採掘した粘土は、最低1~2年、野積みにして風雨にさらします。そうすることで不純物が腐り、土となじみます。また多く含まれる鉄分も除去されます。

このヒヨセと、瀬戸内市長船町磯上の黒土を混ぜ合わせて陶土を作りますが、釉薬を使わない備前焼にとって特に土は重要な要素であり、陶土作りには作品の出来上がりを左右する重要な工程になります。

備前焼の成形方法と装飾

備前焼の成形は、手びねりや轆轤(ろくろ)を使います。

成形した後は、へらなどで装飾を施す場合もありますが、生地の模様は、窯詰めの際に異素材を一緒に焼いたり、炎の動きや、割木の灰などがかかり、模様として焼きあがります。

窯の中の場所や炎の強さ、灰の量によって模様が変化するため、作家は、長年の経験から焼き上がりを予想して窯入れをしますが、最終的には焼きあがるまでわからないということになります。

これが、2つとして同じものができない備前焼の魅力ではないでしょうか。

作品に藁を巻いたり、はさんだりして直接火があたらないように焼き上げた模様を緋襷(ひだすき)といい、熱で溶けた割木の灰が作品にかかった模様を胡麻(ごま)と呼びます。その他の代表的な焼き色はこちらからご覧下さい。

備前焼の焼き方

備前焼の窯は、登り窯が多く使われています。
登り窯は、傾斜を利用して作られ、炉内の燃焼ガスを対流させることにより、炉内の温度を高く一定に保てるように設計されたものです。

窯焚きは、松割木(よく乾燥させた赤松)を使います。
火は、最低でも7日間、長い場合は10~12日間もの間炊き続けられます。
窯に火が入っている間は、土に命を吹き込む工程でもあり、作家は交代で火を見守り続けます。

備前焼の製作工程

  1. 1.

    採土され、1~2年風雨にさらさします。

    製作工程1

  2. 2.

    風雨にさらされた土を細かく砕き水簸(すいひ)します。
    この工程により、より細かな粒子の土を取り出します。

    製作工程2

  3. 3.【土もみ】

    水簸した粘土を黒土と混ぜ、土踏みをした後、土を寝かします。
    半年~数年寝かした粘土を、成形前に「菊もみ」します。
    「菊もみ」をすることで空気が抜け、可塑性が増します。

    製作工程3

  4. 4.【成形】

    轆轤(ろくろ)などをつかい、成形します。

    製作工程4

  5. 5.【乾燥】

    ひび割れや変形を防ぐため、自然にゆっくりと乾燥させます。

    製作工程5

  6. 6.【窯詰め】

    場所によって焼きあがりに違いがでるため、慎重に窯詰めをおこないます。窯詰めが終われば、窯焚きです。

    製作工程6

  7. 7.【窯焚き】

    7日~12日間ほど昼夜問わず1200~1300度で焚き続けます。

    製作工程7

  8. 8.【窯出し】

    土色一色だった作品が、一変してさまざまな色調となって現れる、感動の瞬間です。
    このあと、ひとつずつ丁寧に磨き上げ、検品して完成です。

    製作工程8